地元に自殺の名所だと言われてる崖がある
海辺の小高い山の上に古い神社があって、そこから見る海が凄く綺麗なんだよ
神社から数メートル離れた場所に太くて長い竹でゴールテープみたいに柵というか仕切りがしてある
その竹より向こうにも地面は続いてるんだけど、少し傾斜があってその先が崖になってるのがわかりにくい
でもその神社に辿り着くまでに少し山登りしなきゃいけないんでかなりの高さになることはわかると思う
最近はそこで誰かが亡くなったなんて聞かないし自殺の名所といってもかなり昔の話らしい
子供の頃祭りで行ったきりで今は違うかもしれんけど、山道や神社の周り以外木が生い茂ってるのに崖の方向は雑草だけなんだよ
海を見せるために伐採されたのかもしれないが、子供心になぜか海の方に引っ張られそうな気がして近づけなかった
崖っぷちに向かって何人も踏み固めてられたみたいでおっかない
山道の入口にある鳥居も頂上の神社もあの崖に行くための通過点みたいに思えてそれも怖かった
その山というか崖はちょうど川が海に流込む場所にある
それで浜もあって橋があって漁村がすぐ近くにある
うちじいさんがその辺りに住んでる
じいさんが言うには浜や橋からは見えないが崖の下には満潮だか干潮だかになると出てくる洞穴があって、
風向きとか水位の違いで呻き声みたいな音が海鳴りに混じって聞こえてくることがあるそうだ
じいさんが子供の頃はその洞穴に遺体が入り込んでいることがよくあったらしい
崖から落ちたのかもしれないし、どこかから流れ着いたのかもしれない
漁師町だから海上で水死体引き上げることもあるんで、そこまで怖がられてないけど夜は絶対近付きたくない
っていう、ただ俺がさっき思い出して物凄く怖くなっちゃっただけの話なんだけどね
急に思い出して怖くなって勢いで書き込んじゃった
その先に地面があるように見えるというか、晴れた日は島が見えるからそっちに目が行くんだと思う
夕日とか尋常じゃないくらい綺麗で、死ぬ気がなくても景色見たさに足踏み外した人もいたんだってさ
ついでに、崖なのか山なのかよくわからんが海に出っ張ってる所が黒い岩で、岩の所に百合が咲くんだよ
イワユリっつって白い花なんだけど、それを採ろうとして落ちる人もいたとかなんとか
岩場が多い所だから道端でも見たことあるけど、大抵海辺の届きそうで届かない所に咲いてんの
岩に足をかけて背伸びをして、あともう少し手を伸ばせば、って所にばっかり咲いてる
咲いてる場所が危険だからだろうけど子供の頃「あの花はとるな」って年寄りによく言われてた
群生してるのは見たことないし、黒い岩場にぽつんと咲いてたりするから摘みたくなる気持ちもわかる
自殺も怖いけど景色とか花とか、なんか誘われて逝っちゃった感じがして怖い
今はもう自殺とかあの崖から人が落ちるとかはないけど、地元付近の海で事故はあるから
誰か花摘もうとして落ちたんかなと未だにちょっと思う