日本海側の壮言な景色を堪能し、海岸沿いにある旅館へチェックイン。
贅沢な海の幸に満足し、展望露天風呂にも入ってまったりした。
泊まった部屋は3階の北側で、窓の向こうは日本海。
部屋に案内された時、波の音がうるさいかもしれませんが・・・と言われていた。
見下ろせば、海岸に荒波が打ち付けられる様子がうるさく聞こえる。
明日もいっぱい観光するからと、早めに寝た。
耳慣れない潮騒と、遠くイカ釣り漁船の照明でなかなか寝れない。
彼女のおっぱい揉んだり、おしりを触ったりしながら、うつらうつらしていた。
なにか恐ろしい夢を見たようで、ハッと目が覚めると彼女が居ない。
窓側を見ると、浴衣の裾を広げてペタンとアヒル座りしている。
「どうした?」
「Nちゃん・・・あれ・・・」と、窓の下を指差す。
ひょいと覗いてみると防波堤に人がいる。
「こんな夜中に釣りか?・・・」
「よーく見て」
体育座りをしているように見えたが、微妙に動いている。
どう表現していいのか、手足をからめてヨガをやっているような・・・。
「動いてる・・・ね?」
「・・・もうすぐ・・・」
「なに?」
すると、ヨガの体勢のままコロコロと転がり、防波堤の先端から海に落ちた。
「おおおおおぇ??」
「ね!ね! なにあれ!なにあれ!?」
「・・・・人間ボーリング?」
ふたり呆然と見つめあいながら、言葉をさがしていた。
彼女によると、トイレにいって何気なく外を見たらしい。
そして一連の状況は2回目だと言う。
ふと見ればテトラポットの隙間から黒い影が這い上がってくる所だった。
「・・・また、繰り返すのか?あれ?」
「うん!」(誇らしげw)
「気味が悪いな・・・もう寝よう?」
「幽霊かな?おばけかな?」
よくわからない。
自分もトイレに行った。
部屋にもどると彼女は布団に入って寝返りを打っている。
ふすまをポンと閉めた瞬間、窓の外、ベランダのすぐ内側にスッと人の影があった。
(あっ!!)と思ったが、もうそっちを見れない。
「・・・Nちゃん?」
カーーーーーンッ!!という金属音をたてて人影がバタバタと消えた。
「なに!いまの????」顔面蒼白。
備え付けの懐中電灯を壁からひっぺがし、窓の外へ照射する。
なにもいない。
旅館の人に言おうか?どうしよう?と相談しながら施錠を確認してフロントに降りて行った。12時を少しまわった時間だったが、和装の女将が事務処理をしていた。
オレたちを見て、「なにかありましたか?」とふんわり問いかけ、どう説明していいのかしどろもどろしてしまう。しかし、すぐに「何を見ましたか?」とふんわり核心を問われて逆にこちらがびっくりした。
女将自らが部屋を確認してくれた。
その間ロビーで茶を出され、仲居さんがポツポツと受け答えしてくれたんだが、肝心な“ものの正体”をはっきりは教えてくれなかった。
「決して害をなすものではありません・・・」
「ご宿泊の部屋に問題があるわけではありません・・・」
「海側の部屋、各階でどこの部屋でも“見る”お客様は見てしまうようで・・・」
「時期的なものと聞いています・・・」
あとは逃げるように
「私はまだ見た事がありませんので・・・」
「なんなのかは解らない」と言われた。
女将が帰ってきて、
「別の部屋をご用意出来ますが、いかがいたしますか?」と言った。
「問題ないのであれば、戻ります」
「詳しい説明が出来れば良いのですが・・・」
「結局、なんですか?あれ・・・」
「地元の方は、なんかの神様だと言っております」
「・・・はぁ?」
「こう言っては失礼かもしれませんが、お客様は内陸ご出身ですね?」
「はい、愛知の一宮です」
「(あれにとって)めずらしい・・・のだと思います」
「ははは、なるほど」(なにがなるほどなのかw)
「ここらの人が見ることは滅多にありませんので、でも、気に触られたのであればすぐに別の部屋を用意いたします」
「いえ、大丈夫なら大丈夫でしょう」
女将の落ち着きように安心して部屋に戻った。
旅館そのものは品良く落ち着く雰囲気だし、女将も仲居さんも嘘をついているようには思えなかった。
「まあ、神様ならしょうがないよね」
「座敷童みたいなものかね?」
「私、掛け軸の裏とかお札が貼ってないか確認したもん」
「何にも無かったろ?」
「うん!」
「海から来る神様は“幸をもたらす神様”ってな、云々・・・」
「この海老煎餅すごくおいしいよ!!」
「あ、もう開けて食ってもうとるんかい!」
車の中でお土産のお菓子を開封してしまっている。
機会があったらまた行ってみたいと思う。
おわり