いままで、友人たちに言っても、誰にも相手にされず、
それ以来話すこともなく忘れておりましたが、ふと
思い出したので書き込んでみます。
もう、10年近く前になるでしょうか?
季節は春の初めごろ、4月ぐらいだったと思うのですが、
よく覚えていません。そのころは、あちこちで乗船して
ましたので、もはや記憶は混乱しています。
ただ、夜中のワッチの時間に毎日、ヒャクタケ彗星(だったかな?)が
水平線から10~20度ぐらい上に、とてもきれいに見えていたので、
調べれば時期は特定できるかもしれません。
わたしは少々特殊な業務で船に艤装した機械を扱うエンジニアと
して乗り込んでいたのですが、機械が正常に動いている限り、
なにもすることがないので、他の船員さんと調査員さんに
混じってワッチ当番に組み込まれていました。
しかも0-4のワッチ当番でしたから、
真夜中の0-4時、昼の12ー16時に毎日ブリッジで
当番の航海士さんと一緒に見張りをしておりました。
(続きます)
台湾の高雄港を出航した日の夜だったと思いますが、
ワッチの前任者から、引き継ぎを受けたときに、
『前方の海面が光ることがあるから、気をつけとけよ」
と言われました。
前任者は、引き継ぎしたらすぐに食堂へ夜食を食べに
降りていってしまいましたので、そのときは、それ以上
聞けず、航海士も同じことを8-12当番の航海士から
言われていたようで、二人して「???」な状態で当番に入りました。
それは、当番が始まってから30分もしないうちに始まりました。
計器のランプ以外はなにも明かりがついていない真っ暗な
ブリッジで、コーヒーを飲みながら、前方監視をしていたときです。
水平線付近が「ぼ~っ」と光っている(瞬いている?)のに
気付いたわたしは、そのときの当番航海士(たしか二等航海士)さんに
「○○さん、前方、ほら、光ってないですか?」と
言ったところ、航海士さんも、ほぼ同じタイミングで、光っている
前方に気付きました。
「△△さん(←わたしの名前)、あれ、なんだか、大きくなって
いるような気がしません?」
(続きます)
「そうですね、しかも、本船があの光に向かって進んでいるような?
いや、光が本船に向かってきてるんですかね?」
「△△さん、レーダーにはなにも映ってませんよ。」
と言って、観測レンジのつまみをがちゃがちゃいじっている。
「10マイル以内には、本船後方に先ほどすれ違っていった
漁船以外は映ってないなあ。」
こんな感じのことを二人して喋っていたところ、
光はどんどん大きく見えてきます。
しかも、何と言っていいのか、海の下が光っているような、
緑っぽい感じの光で、波の加減でちらちらと光っているような
感じでしょうか。
30分(←たぶんそんなぐらいの時間だったと思う)もしないうちに
ブリッジにいる二人にも、完全に見えるぐらいに光っている
ものが近づいて来ます。そのころに、二人ともはっきりと分かりました。
本船よりも大きな丸くて光る何かが、海面下5~10mぐらいでしょうか、
こちらめがけてかなりの速度で動いています。
すれ違うころになると、ブリッジでの二人の興奮した話し声を
聞きつけて上がってきた船長と通信長さんの4人して、その
海面下の光る何かを目で追ってました。
(続きます)
「船長、ほら、やっぱりレーダーには何も映ってませんよ」
「そうやね、△△さんの面倒見てるドップラーソーナーにも
何にも映ってませんね」
「なんだろ、あれ?」
「でも、本船の右舷をかわすようだから進路だから、注意して」
「そもそも、あれ、海面下ですよね?動いているの?」
「そうだな」
などと言うような会話を記憶しています。
たしかに、光る何かは、本船のかなり右舷のほうですれ違いそうな
感じです。ただ、海上では、あまり距離感が分からなくて
(わたしには慣れてないだけ?)100mだったのか、それとも
200mだったのか、よく分からないのですが、そんなには近くないけど
間近を光る何かは通り過ぎてゆきました。
すれ違うときは、それはもうきれいな緑色の光の丸でした。
4人して「おおっ~」ってため息が出たぐらい。
そのまま、海面下の光は、進路も速度も変えることなく、本船から
遠ざかってゆきました。
オチもなにもありませんが、船に乗っていた数年間で唯一度の
不思議な体験です。
長文、すみませんでした。